熱帯夜に遊泳する魚たちの幻を見て床から抜けた。冷たい火照り。見上げる空には密林の影を底に星々が煌めく。りゅうこつ座が見事な船底を描いているのがうれしい。渡る風。さざ波は耳に遠く、寄せては返す。
するり、と着衣を脱いだ。羞恥心はない。白い肌が星明かりに滲む。 キャンプは水場の前。星空を鏡のように写している。 波紋。 私のつま先から広がる。 昼に水浴びした場所だ。ジャングルの掟はあるまい。 そのままくるぶしふくらはぎ反対のつま先両のふともも秘部締まる腰と漬かって、思いきり水底を蹴った。長髪が広がる感覚。体が伸びきる。熱帯夜を泳ぐ開放感。すべてが――。 「だれ?」 視線を感じ、胸を隠しながら立ち上がった。だれもいない。 ああ。 それでも隠し切れない胸に雫が伝う腰に水面に隠れる秘部に視線を感じる。白い肩や背にも。飛びたいが私は鳥ではない。密林から見られている、多くの瞳に見られている。張り付くような視線だ。 だから帰国後、彼には会わない。私の体には野生に犯された痕がある。 シャワーでいくら流そうとも体中に張り付いた目玉は取れない。 今日も鏡の中、獲物を狙うように私を視姦する。水底の火照りに狂う。 おしまい ※500文字の心臓・タイトル競作「ジャングルの夜」出展 ○×1、△×2、X×2 by marie_a | 2008-09-25 23:12 | 500文字の心臓
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