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たぶん好感触

 見渡す限り続く広い広い畑に麦秋の風が渡る。なびく穂先は金色の海。鍵盤をなぞるようにさらさらと遠くへ、遠くへ。暮れる夕日に染まる雲が——いや、やめておこう。
 僕は愛犬を撫でながら、人生来し方を——違う、人生行く末を眺めていた。麦畑の先の山々は、かなたかなた。
 ひゅん。
 不意に風を切る音が聞こえた。
 高い音は次第に大きくなり、やがて巨大な円盤状の物体が空から下りてきた。
 おそらく空飛ぶ円盤だろう。風を切る音は自ら回転しているからか。ひゅんひゅんとゆっくり降下してくる。
 着陸はしない。
 そのかわり地表すれすれに滞空し、麦の穂先を撫でるように回転し続けている。
 やがて上昇し空に消えた。一番星が空に輝く。
「ミステリー・サークルか」
 僕はつぶやきながら愛情を込め、ペットの毛並みを撫で続ける。愛犬は気持ちよさそうにしている。
 未来が——否、まだ見えない。


   おしまい






※500文字の心臓・タイトル競作「たぶん好感触」出展作
 ○×3、△×2、X×0
by marie_a | 2009-07-07 20:02 | 500文字の心臓
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