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銀天街の神様

 噴水がある石畳の広場や通りを石の建物が囲む。田舎の小さな街だが、不思議と都のように整っている。上空には厚い雲。重く垂れ込み、街を闇に包んでいる。
 街は、常に暗い。朝も、昼も。
 突然、ターンと銃声が響いた。馬のいななきが続く。
 音はすべて、建物の中から。ぐるりと街のすべての建物から響いているのだから厚みと奥行きがある。
 やがて、軽快で躍動感あふれる音楽が鳴りはじめた。
 ヒヒーン、パンパン、パーン。
 同時に、街の中心にある広場の噴水から一条の光が天に向かって放たれた。厚い雲に疾駆する幌馬車とそれを追う盗賊団の騎馬の群れが映る。
 住民は皆、外で空を見上げている。瞬きも身じろぎもせずに。
 光条の元が一つの目玉であることを、住民達は知らない。噴水の水が少ししょっぱいことも、当然。
 住民は皆、肛門から口まで鋭い刺のような一本木にそれぞれ貫かれたまま銀幕を見上げているのだから。幹は石畳を破っている。
 林立する座席に、空きはない。
 折りしも訪れた旅人もまた、口を開けて天を仰いだ瞬間血しぶきを上げ着席することとなった。
 満員御礼神話。
 目玉はやがて大型宇宙船を投影する。遠い眼差しに気付く者は、いない。



※○×0、△×3、X×1。
 指摘があったのでちょっと変えたり(赤面)。
by marie_a | 2008-04-10 18:53 | 500文字の心臓
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